山の芋が一箱 のべつに喋舌っていては身体が続かない。 その時は火消壺の影に隠れて、帰り道を絶ってやる。 だれに 達磨と云う坊さんは足の腐るまで座禅をして澄ましていたと云うが、仮令壁の隙から蔦が這い込んで大師の眼口を塞ぐまで動かないにしろ、寝ているんでも死んでいるんでもない。 髷の重みだけでも横になりたくなりますよと云うと細君は今まで寝ていたのが髷の恰好から露見したと思ってホホホ口の悪いと云いながら頭をいじって見る。 　迷亭君は今度は右の袂の中から赤いケース入りの鋏を取り出して細君に見せる。 私が貰って行って煮て食おうか知らん だが欺されたと思って、ちょいと覗いて御覧なさいな。 まだ食いなさらんか、早く御母あさんに煮て御貰い。 ええ今まで九州の炭坑におりましたが、こないだ東京詰になりました。 行き当りばったりの多々良君は無論逡巡する訳がない。 ああ云う才気のある、何でも早分りのする性質だからこのくらいの事は人から聞かんでもきっと分るであろう。 始めは林檎ほどな大きさのものがだんだん小さくなって苺ほどになります。