経済問題は断念したらしい。 可哀そうに、そんなに馬鹿にしたものでもないと鈴木君は当らず障らずの返事はしたが、何となく落ちつきかねて、例の金鎖を神経的にいじっている。 令嬢の方でもたしかに意があるんだよ。 かような言語を弄して人を罵詈するものに限って融通の利かぬ貧乏性の男が多いようだ。 もし土地を切り刻んで一坪いくらの所有権を売買するなら我等が呼吸する空気を一尺立方に割って切売をしても善い訳である。 怪しからん奴だ、悪口を云うなんて。 これは本当の噺だと、あのうそつきの爺やが申しました何の事ですこりゃ、意味も何もないじゃありませんか、これでも理学士で通るんですかね。 引き越す時に盗んで行きたかったくらいだ。 この故に吾輩は金田邸へ忍び込むのである。 この時期を経過して他の暗黒色に化けるまで毛布の命が続くかどうだかは、疑問である。 金さえ取れれば何でもする、昔で云えば素町人だからなと実業家を前に控えて太平楽を並べる。 出ればかまずにはいられません。 肉が付いているのでぴんと針を立てたごとくに立つ。 そんな論理がどこの国にあるものか。