RN27 Maxius
Maxius
Not My Will (Luke 22:42) [feat. Rochelle Maxius]


Not My Will (Luke 22:42) [feat. Rochelle Maxius]

Maxius 4 Not My Will (Luke 22:42) [feat. Rochelle Maxius] 3


――主人が偕老同穴を契った夫人の脳天の真中には真丸な大きな禿がある。 するとまた垣根のそばで三四人がワハハハハハと云う声がする。 金田君はなお語をついで、あいつは英語の教師かいと聞く。 あるかも知れないさと主人はまた指を突っ込んでぐいと鼻毛を抜く。 たまに分るかと思うと鳶口や掛矢の事を聞かれる。 それでね、おれも睡眠時間を四時間に縮めるには、永年修業をしたもんだ、若いうちはどうしても眠たくていかなんだが、近頃に至って始めて随処任意の庶境に入ってはなはだ嬉しいと自慢するんです。 人通りは一人もない、ちょっと狐に抓まれた体である。 そんな愚な奴がどこの国にいるものかと主人は斯様な人情の機微に立ち入った事を云われても頓と感じがない。 知ってるか 僕はちと用事があるからこれで失敬すると鈴木君が立ち懸けると、迷亭も僕もいこう、僕はこれから日本橋の演芸矯風会に行かなくっちゃならんから、そこまでいっしょに行こうそりゃちょうどいい久し振りでいっしょに散歩しようと両君は手を携えて帰る。 今まで面白気に行司気取りで見物していた迷亭も鼻子の一言に好奇心を挑撥されたものと見えて、煙管を置いて前へ乗り出す。 金田の娘を貰おうが貰うまいがそんな事はまずどうでもよい。 去年の暮向島の阿部さんの御屋敷で演奏会があって寒月さんも出掛けたじゃありませんか、その晩帰りに吾妻橋で何かあったでしょう――詳しい事は言いますまい、当人の御迷惑になるかも知れませんから――あれだけの証拠がありゃ充分だと思いますが、どんなものでしょうと金剛石入りの指環の嵌った指を、膝の上へ併べて、つんと居ずまいを直す。 ええ、寒月さんの事じゃ、よっぽど使いましたよ。