吾輩が笑うのは鼻の孔を三角にして咽喉仏を震動させて笑うのだから人間にはわからぬはずである。 まずそんなところだろうと主人が云う。 東風子は別段癪に障った様子もない。 足音はだんだん近付いてくる。 花魁が法学士のＫ君でしたが、口髯を生やして、女の甘ったるいせりふを使かうのですからちょっと妙でした。 　何も顔のまずい例に特に吾輩を出さなくっても、よさそうなものだ。 何か新体詩でも作っているのかね。 君不相変やってるなと今までの行き掛りは忘れて、つい感投詞を奉呈した。 首懸の松さと迷亭は領を縮める。 タカジヤスターゼは無論いかん。 翌日になると細君がまた新聞を持って来て今日は堀川だからいいでしょうと云う。 吾輩が驚ろいて、からだの泥を払っている間に黒は垣根を潜って、どこかへ姿を隠した。 おい、名なしの権兵衛、近頃じゃ乙う高く留ってるじゃあねえか。 君何か変ったものを食おうじゃないかとおっしゃるので何を食いましたまず献立を見ながらいろいろ料理についての御話しがありました誂らえない前にですかええそれからそれから首を捻ってボイの方を御覧になって、どうも変ったものもないようだなとおっしゃるとボイは負けぬ気で鴨のロースか小牛のチャップなどは如何ですと云うと、先生は、そんな月並を食いにわざわざここまで来やしないとおっしゃるんで、ボイは月並という意味が分らんものですから妙な顔をして黙っていましたよそうでしょうそれから私の方を御向きになって、君仏蘭西や英吉利へ行くと随分天明調や万葉調が食えるんだが、日本じゃどこへ行ったって版で圧したようで、どうも西洋料理へ這入る気がしないと云うような大気で――全体あの方は洋行なすった事があるのですかな何迷亭が洋行なんかするもんですか、そりゃ金もあり、時もあり、行こうと思えばいつでも行かれるんですがね。