清は時々台所で人の居ない時にあなたは真っ直でよいご気性だと賞める事が時々あった。 今日学校へ行ってみんなにあだなをつけてやった。 兄にしては感心なやり方だ、何の六百円ぐらい貰わんでも困りはせんと思ったが、例に似ぬ淡泊な処置が気に入ったから、礼を云って貰っておいた。 　それから学校の門を出て、すぐ宿へ帰ろうと思ったが、帰ったって仕方がないから、少し町を散歩してやろうと思って、無暗に足の向く方をあるき散らした。 それにしても早くうちを持ての、妻を貰えの、来て世話をするのと云う。 あまり気の毒だから行く事は行くがじき帰る。 広い細長い部屋の周囲に机を並べてみんな腰をかけている。 きのう着いた。 おれは文章がまずい上に字を知らないから手紙を書くのが大嫌いだ。 門から玄関までは御影石で敷きつめてある。 今に学校を卒業すると麹町辺へ屋敷を買って役所へ通うのだなどと吹聴した事もある。 あんな奴を教えるのかと思ったら何だか気味が悪るくなった。 　そう、こうする内に喇叭が鳴った。 この下女はもと由緒のあるものだったそうだが、瓦解のときに零落して、つい奉公までするようになったのだと聞いている。