おれはどうでもするがよかろうと返事をした。 その外に苦になる事は少しもなかった。 独りで極めて一人で喋舌るから、こっちは困まって顔を赤くした。 最前は失敬、君の受持ちは……と人が起き上がるや否や談判を開かれたので大いに狼狽した。 どんな町で、どんな人が住んでるか分らん。 ただ食い物ばかりではない。 もっとも少々面倒臭い。 十五畳の表二階で大きな床の間がついている。 これも親譲りの無鉄砲が祟ったのである。 おれの生涯のうちでは比較的呑気な時節であった。 だから婆さんである。 十五人目に体操の教師へと廻って来た時には、同じ事を何返もやるので少々じれったくなった。 これで大抵は見尽したのだろう。 おれは一ヶ月以前から、しばらく前途の方向のつくまで神田の小川町へ下宿していた。