家を畳んでからも清の所へは折々行った。 浅井は百姓だから、百姓になるとあんな顔になるかと清に聞いてみたら、そうじゃありません、あの人はうらなりの唐茄子ばかり食べるから、蒼くふくれるんですと教えてくれた。 校長は時計を出して見て、追々ゆるりと話すつもりだが、まず大体の事を呑み込んでおいてもらおうと云って、それから教育の精神について長いお談義を聞かした。 やがて、今のはただ希望である、あなたが希望通り出来ないのはよく知っているから心配しなくってもいいと云いながら笑った。 その晩母が山城屋に詫びに行ったついでに袷の片袖も取り返して来た。 この部屋かいと大きな声がするので目が覚めたら、山嵐がはいって来た。 生れてから東京以外に踏み出したのは、同級生と一所に鎌倉へ遠足した時ばかりである。 ただおれと同じようにせっかちで肝癪持らしい。 これでもこの下女の面よりよっぽど上等だ。 もう少し年をとって相続が出来るものなら、今でも相続が出来るはずだ。 十日に一遍ぐらいの割で喧嘩をしていた。 勘太郎は無論弱虫である。 笹は毒だからよしたらよかろうと云うと、いえこの笹がお薬でございますと云って旨そうに食っている。 兄はそれから道具屋を呼んで来て、先祖代々の瓦落多を二束三文に売った。