漢学の先生はさすがに堅いものだ。 清は何と云っても賞めてくれる。 　手紙をかいてしまったら、いい心持ちになって眠気がさしたから、最前のように座敷の真中へのびのびと大の字に寝た。 門口へ立ったなり中学校を教えろと云ったら、中学校はこれから汽車で二里ばかり行かなくっちゃいけないと聞いて、なお上がるのがいやになった。 おれが行くたびに、居りさえすれば、何くれと款待なしてくれた。 相変らず空の底が突き抜けたような天気だ。 おれは何が嫌いだと云って人に隠れて自分だけ得をするほど嫌いな事はない。 今度は夢も何も見ないでぐっすり寝た。 来る途中小間物屋で買って来た歯磨と楊子と手拭をズックの革鞄に入れてくれた。 　いよいよ約束が極まって、もう立つと云う三日前に清を尋ねたら、北向きの三畳に風邪を引いて寝ていた。 やにもったいぶっていた。 何も貸せと云った訳ではない。 門から玄関までは御影石で敷きつめてある。 母が大層怒って、お前のようなものの顔は見たくないと云うから、親類へ泊りに行っていた。