こんな所に住んでご城下だなどと威張ってる人間は可哀想なものだと考えながらくると、いつしか山城屋の前に出た。 もっともうらなりとは何の事か今もって知らない。 この後いつはいれるか分らないから、洋服を脱いで浴衣一枚になって座敷の真中へ大の字に寝てみた。 おれがあきれ返って大きな口を開いてハハハハと笑ったら眼が覚めた。 こんな部屋はいやだと云ったらあいにくみんな塞がっておりますからと云いながら革鞄を抛り出したまま出て行った。 これでもこの下女の面よりよっぽど上等だ。 　それから学校の門を出て、すぐ宿へ帰ろうと思ったが、帰ったって仕方がないから、少し町を散歩してやろうと思って、無暗に足の向く方をあるき散らした。 広いようでも狭いものだ。 　母が死んでから六年目の正月におやじも卒中で亡くなった。 なるほど碌なものにはならない。 笹は毒だからよしたらよかろうと云うと、いえこの笹がお薬でございますと云って旨そうに食っている。 しかし不思議なもので、三年立ったらとうとう卒業してしまった。 　何だか二階の楷子段の下の暗い部屋へ案内した。 茶代なんかやらなければよかった。