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主人も定めし得意であろう。 吾輩も種取り兼人間研究のため、主人に尾して忍びやかに椽へ廻った。 侮辱したと思うのは事実かも知れないが、人の困るのを笑うのも事実である。 ええ、文章は浜田が書いたんです。 　この時主人は、昨日紹介した混沌たる太古の眼を精一杯に見張って、向うの戸棚をきっと見た。 天地と云い山川と云い日月と云い星辰と云うも皆自己の異名に過ぎぬ。 第四はと……金田の妻君。 教場もしくは運動場であんなに騒々しいものが、どうしてかように自己を箝束する力を具えているかと思うと、憐れにもあるが滑稽でもある。 あらそう、あんな顔をして？　それじゃ、そんなに怖い事はないわね。 ――これが主人の髪を長くする理由で、髪を長くするのが、彼の髪をわける原因で、その原因が鏡を見る訳で、その鏡が風呂場にある所以で、しこうしてその鏡が一つしかないと云う事実である。 権貴栄達の士が好んで産する所なり。 銀行家などは毎日人の金をあつかいつけているうちに人の金が、自分の金のように見えてくるそうだ。 馬鹿を云え 人のうちへ案内も乞わずにつかつか這入り込むところは迷惑のようだが、人のうちへ這入った以上は書生同様取次を務めるからはなはだ便利である。