煩悶の極尻尾をぐるぐる振って見たが何等の功能もない、耳を立てたり寝かしたりしたが駄目である。 主人の手あぶりの角を見ると春慶塗りの巻煙草入れと並んで越智東風君を紹介致候水島寒月という名刺があるので、この客の名前も、寒月君の友人であるという事も知れた。 私しが船頭の仮色を使って、ようやく調子づいてこれなら大丈夫と思って得意にやっていると、……つまり身振りがあまり過ぎたのでしょう、今まで耐らえていた女学生が一度にわっと笑いだしたものですから、驚ろいた事も驚ろいたし、極りが悪るい事も悪るいし、それで腰を折られてから、どうしても後がつづけられないので、とうとうそれ限りで散会しました第一回としては成功だと称する朗読会がこれでは、失敗はどんなものだろうと想像すると笑わずにはいられない。 せんだってトチメンボーを御馳走した時にね。 吾輩もこの頃では普通一般の猫ではない。 否椀底の様子を熟視すればするほど気味が悪くなって、食うのが厭になったのである。 また馬鹿な茶番見たような事なんでしょう。 じゃ趣向というのは、それなんですねと主人が念を押す。 達観しない証拠には現に吾輩の肖像が眼の前にあるのに少しも悟った様子もなく今年は征露の第二年目だから大方熊の画だろうなどと気の知れぬことをいってすましているのでもわかる。 三毛のような可愛らしい猫は鐘と太鼓で探してあるいたって、二人とはおりませんからね まず桃川如燕以後の猫か、グレーの金魚を偸んだ猫くらいの資格は充分あると思う。 吾輩は急に動悸がして来た。 早く食わぬか食わぬかと催促されるような心持がする。 首を入れた当人は台を引かれると同時に縄をゆるめて飛び下りるという趣向である。