吾輩はほかに能はないが意志だけは決して君方に負けはせんと剛情を張るのさ それにどの会社でも重役なんで――多分御存知でしょうがこれでも恐れ入らぬかと云う顔付をする。 なるべく尻尾の方を見て三拝しなければならん。 猫と生れた因果で寒月、迷亭、苦沙弥諸先生と三寸の舌頭に相互の思想を交換する技倆はないが、猫だけに忍びの術は諸先生より達者である。 誰だって怒りまさあね、あんなじゃ。 この口調で見るとこの御客さんはやはり金田君の世話になる人と見える。 あるいは主人の方で尻のある見当へ顔を持って来たのかも知れない。 一体誰に御聞きになったんですじきこの裏にいる車屋の神さんからですあの黒猫のいる車屋ですかと主人は眼を丸くする。 単に鼻のみではない、顔全体が低い。 夫を剋する顔だと主人はなお口惜しそうである。 頭は善かったが、飯を焚く事は一番下手だったぜ。 それじゃ首脳だけは逐って伺う事にしようじゃないかと迷亭も少々恐縮の体に見受けられる。 一人が高慢ちきな唐変木だと云うと一人がもっと大きな家へ這入りてえだろうと云う。 ほかの道楽はないですが、無暗に読みもしない本ばかり買いましてね。